彼の事情、彼女の…。
「2週間くらい前かな?アイツさぁ、飲み会でオンナお持ち帰りしてんだもん。サイテーでしょ?アタシ、そんなヤツいらないし?」
いつものポーカーフェイスで言うサヤカ。
…でも、俺はサヤカが言った“2週間くらい前”に反応していた。
2週間前…。
俺は、コンビニへ行くためにあの公園の前を通っていた。
その日は雨が降っていて、視界が悪かった。
でも、いつもの癖で、公園内のあのベンチをチラリと見たんだ。
…すると…
黒い影が“ユラリ”と見えた。
間違い無い。
そこにサヤカが…居た。
サヤカは、降りしきる雨の中、ただじっと…あの日の様に…空を見上げていた。
それは、まるで何かの儀式の様で…。
神聖で、神秘的なモノの様で…。
そこに居るのはサヤカのはずなのに、別人のように見えて…。
俺は、声を掛ける事が出来なかった。