彼の事情、彼女の…。
「確かにな、佑ちゃんはカワイイよ。けど、俺にとっては“妹”だな。だから、モチロン心配はする。佑ちゃんのあんなヘコんだ顔は、俺も、サヤカもケントも…誰も見たくないんだ。」
「・・・。」
「だからな、彼方。まず、謝れ。元はと言えばお前のヤキモチだろ?そんで、告れ。ヤキモチは、佑ちゃんをお前のモノにしてから妬けよ。」
「・・・。」
俯いたまま、何も言わない彼方。
…まぁでも、勘違いが分かっただけでも良いだろ?
後は、彼方がどう出るか。
楽しんで、見学させてもらうさ。
「じゃ、俺帰るわ。今日バイトだし。」
役目を終えた俺は、カバンを持って立ち上がった。
こっからは、彼方が一人で考える時間だと思うから…。
部室を出る瞬間、後ろから「ありがとな。」なんて、ささやかな声が聞こえたので、手をヒラヒラとさせ、そのままバイトへ行った。