彼の事情、彼女の…。
「で、ケガって…どんな?」
校舎に入った時から気になった落ち着かない雰囲気は、はるかのケガと繋がってるだろう。
それなら、これだけ生徒たちを動揺させるケガって…ちょっとやそっとのケガじゃ無いだろう?
「腕らしい。結構血ィ、出てたって…。」
「血が…。」
腕から血って…どんなケガなんだ?
「…俺、見たんだ。右腕だった。結構血が出てて…。」
そう言う純平の声は、少し震えている様に感じた。
サッカー部でエースの純平だけど、血液は苦手で、自分のケガさえも直視出来ない、ある意味優しいヤツ。
隣にケントが居てさ、タオルを腕に巻いてやってたんだけど…そのタオルも結構赤くなってたから、結構ヒドイケガかも…。」
純平はそう言うと、青い顔で“ブルッ”と震えていた。
血液の苦手な純平にとっては、気絶寸前の出来事だったろう…。
同情はするけど…それよりもはるかだ。
早朝の玄関で、それ程のケガをするなんて…普通では考えられない。
じゃあ、普通じゃ考えられない事が起きたのか?
まぁとにかく、ケントが来るのを待つしかないか…。
でも、何となく嫌な予感がする。
…俺の気のせいであってくれれば良いけど…。