彼の事情、彼女の…。






「…なぁ、ちょっと良いか?」





昼休み、俺・純平・愁・彼方の4人は、ケントに促されて屋上へと向かった。


間違いなくはるかの話だと思った俺達は、素直に従った。


屋上に着いて暫くして、重苦しい空気の中、ケントが話し出した。




「…はるかの事なんだけど…、朝、靴箱にカッタ―の刃が仕込んであったんだ。アイツ、それに気付かないで手を入れて…切った。結構深くて、すぐお袋さん呼んで病院行ったんだけど…、10針縫ったってさっきメールが来た…。」



苦しそうに…呟くように言うケント。



俺達4人は、その事実に顔をしかめた。



カッタ―の刃が仕込んであったという事は…犯人が居るという事。



あの、フワフワとした雰囲気の、人を優しい気持ちにさせるはるかが、10針も縫わなくちゃいけないケガをするなんて…。



俺は、あまりの理不尽な事実に奥歯を“ギリリ”と噛み締めた。







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