彼の事情、彼女の…。
「…最低だな…。」
ぽつりとそう言ったのは愁。
「何で…はるかちゃんが…。」
そう言う純平の体は、あまりの怒りに震えていた。
「・・・・。」
無言の彼方も、眉間に深いしわを寄せ、強い不快感を示している。
何故?誰が?
そう考える俺の脳裏には、一人の人物が浮かんで…すぐに打ち消した。
タイミング的に思い浮かべてしまったけど、まさか!
だって、はるかはケントの彼女であってアイツとはほとんど無関係だ。
つまり、はるかを攻撃しても意味がない。
でも、そうすると、一体誰が…。
「誰が犯人か…今の時点では分からないし、その理由も分からない。だけど、はるかを傷つけたヤツは確実に存在する。俺はそいつを許すつもりなんて無いし、犯人は絶対見付ける。」
淡々と話すケントの目は怒りに燃えていた。
「お前らにその手伝いをさせるつもりは無いんだ。…ただ…。お前らも充分気を付けた方がいい。大切なモノを傷つけられてからじゃ…遅いから…。」
ケントの目に、怒りに隠れた悲しみを見付けた。
俺達は、姿の見えない犯人に強い怒りと同時に、不安と恐怖も感じた。
でも、『大切な人は絶対に守る』
それだけは強く強く決意して、屋上を後にした。