彼の事情、彼女の…。



俺の手首を握る彼方は、一度“グッ”と力を込めた後手を離し、目線を落としながら…

「…はよ。」

と言った。



…うん。面白い。

こう言う所がたまらなく面白い。

だからつい、遊びたくなるんだよなぁ。



「ネェネェ、佑ちゃん。今度デートしない?おれ、今フリーなんだよね。」



教室までの廊下で、俺がそう言った途端、前を歩く彼方の背中が“ピクリ”と反応した。


「ん~。やめとく。女の子達から睨まれたく無いし。」


佑ちゃんは無邪気な笑顔で俺に答える。


佑ちゃんは、俺が佑ちゃんのキモチを知っている事を知っている。

だって、何気に俺は佑ちゃんの恋の相談にのっているから。


…まぁ、逆に言えば、彼方以外は皆知っている事には気付いていなくて…。


俺と親友のサヤカのみが知っているんだと思い込んでいる。




そこがまた、面白い。





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