彼の事情、彼女の…。
② sido サヤカ
本当は、初めて会った時から“もしかして”って思っていた。
尋に纏わりつく彼女。
尋達は『彼方狙い。』って言って疑いもしないけど…私の目にはそうは映らない。
彼女の行動も言葉も、彼方を好きなように見せかけてるけど、実は…。
『尋が好き。』
『私を見てほしい。』
『私の気持ちに気付いて。』
そんな風にしか見えないんだ。
だってほら、今も…、
「ジ~ン。見て見てェ。新しいグロス付けてみたんだァ。似合うかなァ?」
廊下のど真ん中で尋の腕に自分の腕を絡めてそう言う彼女は、凄く嬉しそうで…。
「うん。良いんじゃない?」
そう尋に言われると、嬉しい中にほんの少しの恥ずかしさが見てとれて…。
目が…凄く優しくなってる。