彼の事情、彼女の…。




“ピッ、ピッ、ピッ・・・”



機械音が規則的に響く中、俺は、ただそこにあるイスに座ってうな垂れていた。



何の感情も持たない、無機質な機械音。


だけど、この音はサヤカが生きていると言う、確かな証。


サヤカの・・・鼓動の音だ。



ふ・・・と、顔を上げ、目の前のベッドで横たわる白い横顔を見る。



相変わらずの白い顔。


・・・だけど、さっきとは違い、頬にほんの少しの赤みが差していて、少しだけ肩の力がぬけた。




救急車で運ばれたサヤカはすぐに処置をしてもらった。


その結果・・・、全身の打撲と右腕の骨折。


あと、右の側頭部に裂傷があった。



頭からの出血は、それが原因。



ただ、出血の量から比べると、傷は小さく、検査の結果も後遺症も特に無く終わるだろう・・・との事。



サヤカの長かった髪は、頭の処置の為、バッサリと切られ、ショートカットになっていた。





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