彼の事情、彼女の…。



「だけどさ・・・、さっき、気付いたんだ。“おかしい”って・・・。“矛盾してる”って・・・。」



・・・まぁ、それは、はるかの事件が原因でやっと気付けたんだけど・・・。



「それでさ、思いだしたんだ。俺と付き合う前のアカネ。付き合っている時のアカネ。本当のアカネはさ、正義感があって、誰にでも優しくてさ・・・何より、一途・・・だったよな?



付き合う前・・・、俺達はクラスメートで・・・友達だった。



1年の5月頃だったか・・・。


入学式直前の春休みに、事故で入院していた女の子が居た。


クラスの中はもう友達の輪が出来ていて、彼女は1人浮いていた。


そんな彼女に最初に声を掛けたのは・・・アカネ。





『ねぇ、一緒にお昼食べない?アタシ、アカネって言うんだけど・・・あんた、何て呼んでほしい?』




俺も含めて、彼女を遠巻きに見ていたクラスメートなんて気にもしないで、アカネはごく普通に・・・ごく当たり前に・・・そう声を掛けていた。





彼女は、そのアカネの一言がキッカケとなり、クラスへ溶け込む事が出来たんだ。





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