妄想店長~大人と子供~

 静かに寝室を出て後ろ手に扉を閉めた瞬間、私の口から安堵の息が漏れた。


「少しは甘えて欲しいものですね。寂しいじゃないですか。」


 貴方に聞こえない私の本音。

 扉の向こうの貴方が知る必要のない、私の本音。

 貴方からすれば、私なんかに甘えたくはないのでしょう。

 私に弱味を握られるのは真っ平と言う事です。

 それでも私は貴方を甘やかしたいんです。

 少しでも貴方にとって特別な存在である事に、自惚れていたい。

 自惚れで良いんです。

 強引に甘える羽目になった貴方は災難でしょうが。

 原因は貴方ではなく私ですからね。

 私の我が儘です。

 暫くは菫色のレースを保健室のカーテンとして使って下さい。

 まぁ、貴方にとっては柔らかく薄い菫色の牢獄でしょうが。

 それで良いんです。
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