妄想店長~大人と子供~

 私はポツリポツリと現れるお客様の相手をしながら、ぼんやりと過ごしました。

 いつもと同じ店内の筈なのに、とても広く感じるのは貴方がいないからでしょうか。

 仕事も見るのと実際やるのでは大違いですし、お客様に心配される始末。

 こんなに貴方が重要だなんて、実は意外でした。

 私は大人で、入れ替わりの激しいバイトがいない時は、勿論一人で店を開けていたんですよ。

 ずっと閉めて置く訳にはいきませんから。

 それなのに、こんなにも勝手が違うなんて。


「翠ちゃん、大丈夫かい?今日は香塚君どうしたの?」


 本日、三人目のお客様の言葉。

 掛けられた言葉も三度目。

 もう、笑うしかない。

 誰が見ても私の仕事振りは不慣れなんでしょう。

 それだけ私に雑用が似合わないって事にして置きます。

 私は不慣れな仕事を、お客様の温かい心配の声に支えられて、なんとか最後のお客様を見送る事ができました。
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