妄想店長~大人と子供~

 完全に眠りの中に落ちる寸前、温もりの正体が小さく溜め息を吐いた。

 溜め息?

 今度こそ私の意識は急速に覚醒しだしました。

 眠いのは山々ですが、この状況は寝ている場合じゃないと本能が教えています。

 だって溜め息です。

 いつもいつも聞いている溜め息が、いつもより近くで、押し付けた頬を通して聞こえたんです。

 目の前の見覚えあるロゴは、貴方の愛用のシャツです。

 規則正しい音は、貴方の心音。

 擦り寄った温もりは、貴方の体温。

 一気に瞼を開けた私は、貴方の胸元にいる自分に心底驚きました。

 横向きに寝ている貴方の身体に、横向きに張り付く私は、貴方の脇布を握り締めていたりして・・・最悪です。

 子供じゃあるまいし、これじゃ、貴方が逃げない様に捕まえているみたいじゃないですか。
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