妄想店長~大人と子供~

「あの、翠さん?本当に気付いてなかったのか?」


 余りの驚きで立ち尽くしている私に、貴方は恥ずかしそうに上目遣いで問い掛ける。


「気付く訳ないでしょ。いつも眉間に皺を寄せて溜め息を吐かれていたんですよ?嫌々、アタシと居て下さっているんだとしか思ってませんでした。」


 今考えると、そこに疑問を感じなかった自分が如何に観察力に欠けていたのか分かる。

 あの女の子が店に来て、貴方を好きで諦めきれない、と言った時、貴方は照れもしなかった。

 私の言う冗談には面白いほどに顔を赤くして取り乱していたのに。
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