妄想店長～大人と子供～

「そんなの、人前で出来なかったからに決まっているじゃないですか。ついでに言えば気を遣っていた訳でもないです。言っている事は冗談に見えても、人前で言えるほどの勇気はありませんでしたからね。」


　見上げる貴方は、私の苦笑を不安な瞳で見つめている。

　もう、言っても良いんですよね？

　もう、冗談に見せなくて良いんですよね？


「アタシは冗談でしか言えなかっただけですよ。竜哉サンが同じ気持ちだと知っていれば、こんなに遠回りしてませんねぇ。」


　私の笑顔に、貴方の瞳が見開かれていく。

　信じられない、と顔の総ての筋肉で表現している貴方。

　えぇ、私も信じられませんよ。

　貴方の想い人が自分だったなんて。

　私なんかを貴方が想っていてくれるなんて、妄想の中でしか有り得ませんでした。

　有り得ないからこそ私に妄想癖が付いてしまったんです。