妄想店長~大人と子供~

 呆れた様な目で私を見ている貴方に、微笑む。

 貴方の嫌いな私の嘘笑顔。

 完璧な営業スマイル。


「翠さん?」


 私の笑顔に貴方の表情が固まる。

 眉間に皺を寄せて、口を一文字に結び、黒い瞳が不安に揺れる。

 あぁ、私って意地悪ですねぇ。

 でも、貴方のそんな顔も好きだったりするんですよねぇ。

 だって、相手が私だから不安に思ってくれているんでしょ。

 それが分かった今、貴方の揺れる瞳は私を想う目盛りなんです。

 何かを言おうとした貴方の言葉を遮る扉の音。

 おや、良いタイミングでお客様です。


「いらっしゃいませ。」


 私の視線が貴方から迷う事なく入り口へ向けられる事に、きっと、貴方の瞳は揺れを増す。
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