妄想店長~大人と子供~

「翠、俺来ちゃまずい時に来ちゃったか?」


 私を呼び捨てにする所も昔から。


「そんな事ないですよ。お客様なんですから、開店している以上、アタシの店はいつでもウェルカムです。」


 小声で言う男に私は笑いながら答える。

 貴方に気を遣う男は間違いなくお客様なんですけれど、私情を抜きにすれば、この人は昔から周りに気を配る事の出来る人です。

 こんな風になりたいものですね。

 無理ですけど。

 そんな事の出来る人間ならとっくに父親は私の心配を止めているでしょう。


「そうか?お前ら喧嘩中か?」


 やっぱり、小声で言う男に私は少しだけ声を立てて笑った。

 狭い店内、幾ら小声でも内容は貴方へ筒抜けですよね。

< 200 / 224 >

この作品をシェア

pagetop