妄想店長~大人と子供~

 ふざけて言うしかないでしょ。

 こんな事、真面目に言ったところで貴方を困らせるだけなのに。

 貴方に会えなくなるのは嫌なんです。

 でも、想いを口にしないのも嫌なんで、せめてふざけて言っているんです。

 しっかり自分が傷付く毎日だけど。


「店長なんてそんな冷たい呼び方止めて、スイと名前で呼んでと言っているでしょう。なんて他人行儀なの?」

「他人ですから。」


 即答されて玉砕。

 あぁ、今日という今日は立ち直れないかもしれない。

 カウンターの隅で黙り込む私に盛大な貴方の溜め息が聞こえる。

 今日という今日は嫌われてしまったかもしれない。

 抜群の座り心地の滑皮のソファーに体を沈め、目の前の一輪挿しに飾られる白いマーガレットの花びらをプチプチ千切り、美しい木目のカウンターに並べて見る。

 滴の様な形のそれが、私の涙。


 あぁ、重症。
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