夢想物語(仮)
唸りながら考えている獏に向かって僕は何気なしに呟いてみる。

「桜…とか?」

「桜…。たしか、お前と出会った夢には桜が降っていたな。」

ただ言ってみただけなのに、獏は「ふむ」と言って考える素振りを見せた。

「いいかもしれないな、桜か。」

考えていた獏は、そう言うと僕に狐の面をつけた顔をグイっと近づけた。

「俺の名は桜にした。」

「え、ほんとに?」

言ってみただけなのに…。そう思ったが獏…桜が僕の意見を認めてくれたことが嬉しくて、つい頬を緩ませながら問いかけてしまった。

「あぁ桜だ。」

桜が、にまあと笑みを浮かべているのが分かるような口振りで繰り返した。

「さあ、俺は名乗った。次は、お前が名乗るべきだろう?」


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