夢想物語(仮)
僕と同じぐらいの背の桜は少し腰を落として、まるで次はお前の番だといわんばかりに僕を見上げた。

「…僕の名は、トウジ。」

答えれば桜は首を傾げた。
「トウジ?字は、どのように書くんだ?」

首を傾げた理由に納得して、僕はペンと紙を探したけれど夢の世界に、そんなものは無いのだと気付いた。

「あーえーと、果物の桃に慈しむって書くんだけど…分かる?」

「ほう。良い名だな。」

字を教えれば、僕を見上げていた桜は静かに立ち上がり僕の肩に手をのせ言った。

「桃というのは、すなわち俺の色だ。それを慈しむとは…お前の親は良い名を、お前に与えたな。」

「え、えーと。」

桜が誉めてくれた(?)のに、僕はまともな返事が出来なかった。

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