夢想物語(仮)
「お前が、まだ人魚になっていなくて良かった。」

あまりに優しい声で桜が言った。それって、つまり僕に逢えて良かったってこと?

「どうした?」

僕が考えごとをしていれば、桜が問いかけた。

「え?」

「頬が弛んでるぞ。」

僕が桜を見れば、僕の右の頬を桜の手が、むにゅっと引っ張った。

「いっ痛い!痛いよ、桜!!」

「ふん、お前がだらしない顔をしていたから戻してやったんだ。感謝しろよ?」


またまた上から目線な桜の言葉に、ムッとして片頬をふくらませれば桜は声を押し殺して笑った。


「笑うなら、どうどうと笑えばいいだろー…」

「いや、どうどうと笑えば失礼に値すると思ってな?」

そう言って桜は肩を震わせた。
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