夢想物語(仮)
「だがお前は此処にいる。夢が終わったというのに、眠りにおちることもなく目が覚めることもなく、いま俺と話している。」

そう言って獏は、また僕の頭を一撫でした。

「つまりは、どういうことなの?」

「お前は、なんらかの事情で目が覚められない状況にあるってことだろうな。」

撫でられたことが少し恥ずかしくなって斜め下に視線をやりながら聞けば、獏は手を顎にやって考えるような仕草を見せながら言った。

「まあ、お前が目を覚ますのを待とうとしようじゃないか。人は目覚めるものだ。」

そう言ったあと獏は笑みを浮かべたような気がした。
納得ができたわけでは無いが、そうするしか方法が無いのは確かだった。
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