夢想物語(仮)
「それじゃあ夢から覚めるまで僕は、ずっと此処にいるの?」

この夜明け前ほどの光しかない世界に?
一人で?

「そういうことになるな。だが心配するな。お前を一人にはしない。獏の仕事は、しばらく休業だ。」

一瞬、僕の体がビクリとなった。

「どうして獏には、僕の気持ちが分かったの?」

驚きながら聞けば獏は、面の表をカリカリとかきながら言葉を発した。

「獏…ばく、な。」

「は?」

見当違いの返答に眉間にシワを寄せて聞き返せば、獏は困ったように言った。

「獏というのは、俺の名前ではない。俺の仕事の名だ。」

僕は口を、ポカンとあけて唖然としてしまった。

「だからといって、俺には呼ばれるべき名があるわけでもない。…ふむ、どうするべきか。」
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