クランベリー
でも、会いに行かないわけはなかった。


「行くよ。すぐ行くから!」


ヒロトの声を聞いただけで、さっきまでのモヤモヤはどこかに吹き飛んでた。


どれほど会いたいと願い、どれほど叶わなかっただろう…


私は車を走らせ、いつもより早くヒロトのアパートに着いた。

一分一秒でも早く会いたいのをおさえ、ゆっくりと彼の部屋にたどり着いた。


ピンポーン♪


チャイムを鳴らすと、ヒロトがでてきた。
と、同時に私の目にはいったのは、玄関にある女物の黒いパンプス。

胸がズキっと音をたてた。
私が来るの知ってて、どういうつもり?!

「早かったじゃん。元気してた?」

「元気だよ。」

心とはうらはらに、平然を装い、その黒い物に気付かないフリをした。

「彼女の?」なんて口に出すほど、私は馬鹿じゃない。

今ここでは、彼女という言葉は口に出したくない。
禁句なのだ。


私は靴を脱ぎ、部屋へあがる途中、洗面所が視界にはいり、なにやらピンク色の物が目にとまる。

よく見れば、歯ブラシだ。しかも、ピンクの物とキャラクター物など数本ある。


は?!
何これ?
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