YOU&I
口の端を切って、壁に寄りかかって立っている涼喜と、威嚇するように睨みつけて涼喜の前に立つ、啓ちゃん。
いつも優しくて、いつも笑顔で、いつも周りに気を配っている啓ちゃん。
こんな啓ちゃんを見たのは初めてで、でも普段は優しいたれ目も睨むと迫力がすごくて、あたしは思わず怖くなって、両手を口元にあてた。
「由衣」
不意に声をかけられ、横を見ると恭介が立っていた。
「‥恭介、啓ちゃんどうしたの?」
「アイツ久々にキレやがった」
「止めないの…?」
啓ちゃんは喧嘩が強いイメージがなかったため、あたしは心配になり、恭介に止めるよう無言で訴えかけた。
「でも先に手出したの啓也だしな。まだ1発だけどどっちにしろ処分受けるなら思う存分殴らせてやろうかなーっと」
啓ちゃんから手を出した?
信じられない。
睨み合ったまま動かない2人を交互に見ても、啓ちゃんはまだ無傷だ。
この2人の無言は…きっと啓ちゃんの中の葛藤。
自分を抑えようとしているのが、わかる。
優しい人だから。
ならあたしのする事は決まってる。
…恭介は、間違ってる。
「啓ちゃんっ」