YOU&I


このまま啓ちゃんのそばにいてもいいのだろうか。
例え啓ちゃんがそれを望んだとしても、それは本当に正しいのだろうか。
あたしはこの先もずっと、啓ちゃんの気持ちに応えられる気がしない。
それなら、さよならをしたほうが、啓ちゃんの為にもなるんじゃないだろうか…?

『…ねぇ、啓ちゃん!』

『ん?』

『あのさ、これからもう、送ってくれなくていいよ!あたし一人でも大丈夫だし…そんな遅くならないように気をつけるし』

『…』

『それに、‥啓ちゃんが守ってくれるのは嬉しいけど、でも…あたし、大丈夫だから…』

『…』

あたしの言葉に啓ちゃんは、目を見開いて驚いたあと、何も言わなくなった。
あたしの判断は、きっと間違ってはいないと思った。

『由衣にとって、俺はそこら辺のダチと一緒って事?』

『啓ちゃんは…』

『周りの奴らより少しくらい特別でいさせてもくんねーわけ!?』

でもあたしの判断は、やっぱり間違っていたのかもしれない。
理屈的に考えれば、間違ってはいなかった。
でもあたしは啓ちゃんの心を大きく傷つけてしまった。
それはやっぱり、最大の間違えである事に気付かされた。

『啓ちゃんっ、ごめ‥』

『俺、由衣の彼氏になりてーわけじゃねぇよ。由衣を守ってたいだけだよ、それもだめなん?』

『そういう意味じゃ…』

言いかけてあたしは、言葉を呑み込んだ。
それじゃぁあたしはどういうつもりであんな酷い事を言ってしまったんだろうか。
それは啓ちゃんの言う通り、ちょっとだけでいいから特別でいたいと思う啓ちゃんの健気な姿勢を、無残にも切り捨てるためだけの言葉だった。

『け‥い、ちゃん…ごめんなさい』

あたしは初めて啓ちゃんに怒鳴りつけられた事もあり、一気に溢れ出した涙を隠しきれず、顔を両手で覆って道端に座り込んだ。
どうしていいのか、もうとっくにわからなくなっていた。



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