YOU&I



あーちゃんに話した後、自分の罪を再認識したあたしは1週間休み続ける啓ちゃんにあたしは居てもたってもいられなくなり、あの日の口論が全く意味がなくなるのを覚悟で、啓ちゃんの家へいった。
結局あたしはあんな偉そうな事を言って傷付けたくせに、啓ちゃんがいないと寂しくて不安になる。
一人じゃだめになってしまったんだ。

放課後の時間帯、啓ちゃんの両親は共働きなのでまだ家には啓ちゃんしかいないはず。
呼び鈴を押しながら、あたしは啓ちゃんに何を言おうか考えた。
とりあえず、あたしは謝りたかった。
それだけを決めてドアが開くのを待つ。
3分くらい待って、諦めて帰ろうかとしたとき、啓ちゃんちの2階のベランダが開いた。

「鍵開いてるよ」

ベランダがあるのは、啓ちゃんの部屋。
ベランダの柵によしかかり、スウェット姿で出てきた啓ちゃんは優しく笑ってそう言った。
あたしは玄関をくぐり、啓ちゃんの部屋へ向かう。


「…啓ちゃん、学校来ないの?」

「んーダルくて。由衣寂しい?」

そう言ってニカッといたずらに笑う啓ちゃん。
でもその笑顔の影には、期待なんかしていないような、諦めたような、悲しいオーラが見えた。
1度さよならをしようとしたあたしが、そしてあんな風に傷つけてしまったあたしが、"寂しい"なんて、言ってはいけない気がした。
でもだからといって言わないのは、啓ちゃんをまた傷付ける事になりそうで怖かった。

「‥寂しいよ、啓ちゃん。きっとみんな寂しい」

また中途半端な関係になってしまうことは容易に想像はつく。
でもこれ以上啓ちゃんを傷付ける事になるなら、それでもいいとさえ思った。
それでも"みんな"なんてあたしはズルイ逃げ方をした。

「"みんな"かぁ」

楽しそうにそう言って笑う啓ちゃんは、やっぱり悲しいオーラが出ている。
実際、啓ちゃんはみんなから好かれているタイプだから1週間も休んでは、みんな寂しい。



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