YOU&I


「啓ちゃん、寂しいよ」

「…ありがと、由衣。明日からは行くよ」

「‥うん」


それからあたしと啓ちゃんは取り止めのない雑談をして、夕方くらいに帰された。
俺は送れないから、暗くなる前に帰って、と言われたから。




「由衣、おはよ」

「‥おはよ!」

次の日啓ちゃんは、約束通り学校にきてくれた。
そしてその日からはまたいつも通り啓ちゃんが帰りを送ってくれる日が始まった。
きっとコレが、啓ちゃんが1週間悩んで出した答えなのだと、あたしはそう受け取る事にして、もう啓ちゃんには何も言わなくなった。








「由衣」

「…」

「由衣、わかってるよね。あんた、啓也に甘え過ぎたんだよ」

「‥そんな事、」

「啓也がどうしてキレたか、まだわからないなんて言わないよね?」

理由はきっと、2年前の事と繋がるんだろう。
あの日からあたしは啓ちゃんを"特別"に思うようになった。
でも涼喜と仲良くなって‥あたしも気付かないうちに、涼喜も"特別"になっていた。

"付き合えなくていいから、少しだけ特別で居たい"

それが啓ちゃんの想いだった。
あたしはそれを受け入れ、あたしの中で啓ちゃんは少しだけ特別な存在だった。
そうすることで、啓ちゃんは叶わないとわかり切った気持ちを落ち着かせていたんじゃないかと思う。
気持ちに応えられない代わりに、あたしと啓ちゃんの間ではそんな契約が結ばれていたんだ。



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