YOU&I
それなのにあたしは、涼喜を特別にする事で、その契約を破ってしまった。
そしてきっと何かを切っ掛けに、啓ちゃんはキレたんだと思う。
「…でもあーちゃん、」
「わかるよ。私だって伊達にあんた達を見守ってきたわけじゃないんだから」
「…あたし‥、どうすれば…」
「うん。きっと啓也も同じ事を思ったと思うよ。このまま由衣を縛り付けて居るわけにはいかないって…さっき、由衣が鈴島を優先したときに気付いたと思う」
「優‥先…」
あたし達はお互い、縛ってるつもりも縛られているつもりもない。
ただ、結果そうなってしまっただけ。
そんなあたし達に明るい未来なんて、あるんだろうか。
きっと、ない。
だってあたしは、啓ちゃんはやっぱり友達だから。
あたし達の気持ちはきっと一生平行線なんだろうから。
それなら、本当にそうなのだとしたら…
「これがいい機会だって、啓也も思っただろうね」
啓ちゃんに拒絶をされて泣いているあたしは、もういない。
啓ちゃんの拒絶は、優しさだったのだから。
やっぱり啓ちゃんは、誰よりも優しい人なんだ。
「あーちゃん、あたし啓ちゃんと話すね」
「由衣がそう思うなら、そうしな」
今日の放課後、啓ちゃんの家を寄ろう。
あの日みたいに…ごめんね、を言いに。
でもあの日のごめんね、とはきっと意味合いは違うだろう。
"さよなら"の"ごめんね"。