YOU&I


「でも俺、嫉妬した事なかったんだよ」

「…」

どうして?‥なんて、厚かましい事をあたしは聞けない。
思わず出そうになった言葉を再び呑み込む。

「由衣にとって俺ってなんだかんだ言ってもやっぱ特別だったしょ?いろんな意味で」

そんなのは、当たり前だ。
啓ちゃんはいつでもあたしのそばで、あたしを支えてくれる人だったから。
誰よりも大切に思っていた。
もちろん、今も、これからだってきっとそう。

あたしはすでに言葉の意思表示をできないくらい、涙が込み上げていて。
堪えるためにあたしは、言葉を発さず、大きく頷くしかできなかった。

「うん、それで十分だったんだ、俺」

「…」

耐えなきゃ。

「でも俺わがままだからさ、足りなくなって」

「…っ」

「由衣が俺のものだったらいいのに、って。そんなときにアイツ‥鈴島が、由衣に近づいてきて、俺、抑えきれんかった」

「どう‥して…」

「‥俺も伊達に3年間由衣を見守ってきたわけじゃないから」

「…?」

啓ちゃんの言葉の意味がわからなくて、頭にハテナマークを浮かべて疑問を主張する。

「由衣が、鈴島に惹かれてんの、俺気付いてたよ」

あたしが‥涼喜に惹かれている?
啓ちゃんは‥それに気付いていた?

「だからっ…怖かった‥、鈴島に、由衣を取られそうで怖かった‥」

気付けば目の前に座った啓ちゃんは、さっき以上に目を真っ赤にしていた。
震える拳をあたしは、そっと自分の両手で包み込んだ。
…いつも啓ちゃんが、あたしにしてくれていたように。
あたしも啓ちゃんを、守りたいから。


< 23 / 78 >

この作品をシェア

pagetop