YOU&I
「でも俺、嫉妬した事なかったんだよ」
「…」
どうして?‥なんて、厚かましい事をあたしは聞けない。
思わず出そうになった言葉を再び呑み込む。
「由衣にとって俺ってなんだかんだ言ってもやっぱ特別だったしょ?いろんな意味で」
そんなのは、当たり前だ。
啓ちゃんはいつでもあたしのそばで、あたしを支えてくれる人だったから。
誰よりも大切に思っていた。
もちろん、今も、これからだってきっとそう。
あたしはすでに言葉の意思表示をできないくらい、涙が込み上げていて。
堪えるためにあたしは、言葉を発さず、大きく頷くしかできなかった。
「うん、それで十分だったんだ、俺」
「…」
耐えなきゃ。
「でも俺わがままだからさ、足りなくなって」
「…っ」
「由衣が俺のものだったらいいのに、って。そんなときにアイツ‥鈴島が、由衣に近づいてきて、俺、抑えきれんかった」
「どう‥して…」
「‥俺も伊達に3年間由衣を見守ってきたわけじゃないから」
「…?」
啓ちゃんの言葉の意味がわからなくて、頭にハテナマークを浮かべて疑問を主張する。
「由衣が、鈴島に惹かれてんの、俺気付いてたよ」
あたしが‥涼喜に惹かれている?
啓ちゃんは‥それに気付いていた?
「だからっ…怖かった‥、鈴島に、由衣を取られそうで怖かった‥」
気付けば目の前に座った啓ちゃんは、さっき以上に目を真っ赤にしていた。
震える拳をあたしは、そっと自分の両手で包み込んだ。
…いつも啓ちゃんが、あたしにしてくれていたように。
あたしも啓ちゃんを、守りたいから。