YOU&I
-戸惑い-
「…もしもし、あーちゃん?」
『由衣、いまどこ?』
「もう家帰ってきたところ。あのね、」
『そっち行っていい?』
あたしもあーちゃんも同じ地元の出身。
家も歩いて10分程度で近いほうだ。
時刻はもう10時前。
「でもあーちゃん」
『…待ってて、話聞くから』
そう言うと半ば一方的に電話は切れた。
あたしは中1の頃から、9時以降に一人で出歩いたことがなかった。
9時より遅くなるときはいつも、啓ちゃんが送ってくれたから。
まるであたしのお母さんみたいな啓ちゃん。
だからこんな時間に一人でくるというあーちゃんが少し心配になった。
あーちゃん、美人だし。
それからあたしはとりあえず、軽いメイクだけして、スウェットに着替えて、紅茶を淹れながらあーちゃんを待った。
10分くらいしたとき、あたしの携帯が震える。
あーちゃんからのワンコ。
着いたっていうサイン。
あたしは玄関の鍵を開け、ドアを押す。
「由衣っ」
息を切らしたあーちゃんが立っていた。
「あがって、あーちゃん」
「ありがと」
あーちゃんを部屋に行くよう促し、あたしはキッチンから紅茶を二つ持って、部屋へ向かう。