YOU&I
「それで?」
「うん、‥啓ちゃんにさよならした」
苦しくなる胸に気づかないふりをするために、あたしはへへっと笑う。
「そう。啓也なんか言ってた?」
「ううん、特には」
「じゃあいつも覚悟してたんだろうね」
「…たぶんね」
あれは最後の告白。
啓ちゃんなりのけじめだったんだと思う。
あたしが頭を下げた後、啓ちゃんは何も言わなくなった。
あたしはしばらくして、一言バイバイを告げて部屋を出た。
送ってくれる啓ちゃんも、ごめんなって笑う啓ちゃんもいなかった。
それは寂しくもあったけど、仕方ないことだと自分に言い聞かせるしかなかった。
「啓也、明日学校くると思う?」
「わかんない」
中2の春を思い出す。
「こなくても、もう由衣は行っちゃだめなんだろうね」
「そう、だね」
あーちゃんはそれ以上は深く聞いてはこなかった。
嬉しいような、嬉しくないような。
話したいけど、話したくない。
あたしはやっぱりわがままなんだね。
いままできっと贅沢に過ごしてきたから…甘えてしまっていた。