YOU&I


恭介の話はこうだった。

昨日の夜あたしがあーちゃんに電話したように、啓ちゃんも恭介に電話をしたらしい。
ただ一言、由衣との事は終わった、と、啓ちゃんは言ったらしい。
事情は特に聞かず、恭介は啓ちゃんを遊びに誘い、中学の頃からつるんでいる4人で地元のゲームセンターへ。
恭介なりに啓ちゃんを励まそうとしたみたい。
そのゲーセンで2人組の女の子に声をかけられたらしい。

『4組の柏木くんだよねっ?』

妙に明るい彼女は、頬を赤らめて隣にいる子の裾をしっかり握り締めてそう言った。

『‥そう、だけど?』

『嬉しい!咲は1組なんだけど、わかる?』

『ごめん、わかんない』

『遠いもんね、でも咲、柏木くん知ってるよ!カッコイイなーって思ってたから!…ねぇ、アドレス交換しよ!』

そこまで一人でペラペラと喋ると、自分の携帯を取り出した。
啓ちゃんも何かに吹っ切れたように、いきなり笑顔になると自分の携帯を取り出したらしい。



「そんな感じ」

「…」

恭介の話を聞いたあと、黙り込んでしまったあーちゃん。
他の子に目を向け始めた啓ちゃんに対する憤り、それを止めなかった恭介に対するイライラ。
でも次へ踏み出そうとする啓ちゃんを止めることはできないし、恭介も同じ気持ちだという事もわかっている。
だからこそ、心にモヤモヤが広がるんだ。

でも当のあたしは、何も感じなかった。

悲しいのかな、寂しいのかな。
自分が今何を感じて何を思っているかも、わからない。


でも、どれも違う気がするんだ。



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