YOU&I


「まさかこんな展開になるとはね」

ボーッと黒板の前で喋る先生を眺めていると、ふと声をかけられた。
声がしたのは、隣に座る涼喜。
彼もあたしと同じくらいやる気のない顔でだらしなく座っている。

「なんか俺までショックだよ」

「‥何が?」

「何って、え?」

涼喜の話には主語がないけれど、なんの話かくらいは安易に見当がつく。
でもあたしはあえてすっ呆けてみた。
そんなあたしに、焦ったように涼喜は体をこちらへ向かせた。

「…うそだよ」

「ビビらせんなよ!俺余計なこと言っちゃったかと思ったじゃん!」

どうやら本気でビビったようで、涼喜は大きいため息をついた。
あたしが小さく笑うと、涼喜もちょっと困ったような顔で笑った。

「‥同じクラスって気まずくね?」

一通り笑った後、遠慮がちに涼喜はそう言った。
教室は、気づけば次の授業でやる小テストの自習時間になっていて、少し騒がしかった。

「…」

「昨日は"由衣に近づくな"って殴ってきた奴が、次の日には違う女連れてんだもんな」

「‥涼喜も知ってたんだね」

「つかみんな知ってんじゃない?」

まだ入学して1ヶ月も経たないうちにカップルができて、しかも啓ちゃんほどカッコイイとなれば、噂にもなるのかな。


「アイツ、ただのタラシじゃん」



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