YOU&I
「何してんだろう、あたしのバカ」
とりあえず夢中に走ってきたのは、昨日の非常階段。
こちら側は実習棟なので、静かだった。
階段に座り込み、はぁ、っとため息をつく。
涼喜は何も悪くないのに、涼喜の一言に頭にきたあたしは、ある事ない事涼喜に八つ当たりをしてしまった。
きっとあたし、悔しかったんだと思う。
啓ちゃんを他の人に取られたことが。
遠くで授業の終わりを知らせるチャイムの音が聞こえる。
ガチャ…
「あ、いたいた」
非常階段のドアが開く音と一緒に聞こえた声に、あたしは驚いて振り向く。
「…啓ちゃん」
「こんな寒い日にこんなとこ座ってるなって。中入ろ?」
いつもの優しい笑顔を浮かべた啓ちゃん。
軽く身震いをして、あたしを促す。
あたしは顔を左右に振ってそれを拒否すると、啓ちゃんはあたしの横に腰を下ろした。
「風邪ひいたら由衣のせいね」
いたずらに笑ってそう言いながら。
「‥どうして啓ちゃんがきたの?」
「や、由衣が走って出てって何かと思ってさ」
「…でも啓ちゃんは、もう‥」
もう、あたしを守ってくれなくていいのに。
「センセーが追っかけようとしてたから、それなら俺が行った方がいいと思って!センセーとバトンタッチしてきた」
そう言って啓ちゃんは笑ってみせた。
可愛い笑顔で、あたしの頭を撫でる。