YOU&I
そっか。
啓ちゃんは、なにも変わってないじゃん。
さよならしたって、他の子と登校してたって、優しい啓ちゃんは啓ちゃんのまま。
何も変わってないんだ。
ただあたしが、悲劇のヒロインぶっていただけだった。
ますます、涼喜に悪いことをしちゃったな。
「啓ちゃんありがと」
「いいえ!それより、なんかあったの?」
「え?」
「いきなり教室飛び出て」
「あー、うん、まぁ…」
「…由衣が出てったあと、鈴島も出てったよ。由衣と違ってのんびり歩いてたけど」
「え?」
どうして涼喜まで。
「アイツと喧嘩でもしたの?」
不自然なまでに穏やかな笑顔でそうあたしに聞く啓ちゃん。
「…」
黙り込んでしまったあたしを見て、啓ちゃんはちょっと困った風に顔をゆがめた。
「一人で考えたい?」
啓ちゃんの問いかけに、小さく頷く。
「ん、わかったよ。じゃ俺は教室戻るわ。…雨降りそうだから由衣も早めにね」
「ありがと、啓ちゃん」
あたしがお礼を言うと、少し嬉しそうに笑って、啓ちゃんは校舎内に戻っていった。