YOU&I


そっか。

啓ちゃんは、なにも変わってないじゃん。

さよならしたって、他の子と登校してたって、優しい啓ちゃんは啓ちゃんのまま。
何も変わってないんだ。
ただあたしが、悲劇のヒロインぶっていただけだった。

ますます、涼喜に悪いことをしちゃったな。

「啓ちゃんありがと」

「いいえ!それより、なんかあったの?」

「え?」

「いきなり教室飛び出て」

「あー、うん、まぁ…」

「…由衣が出てったあと、鈴島も出てったよ。由衣と違ってのんびり歩いてたけど」

「え?」

どうして涼喜まで。

「アイツと喧嘩でもしたの?」

不自然なまでに穏やかな笑顔でそうあたしに聞く啓ちゃん。

「…」

黙り込んでしまったあたしを見て、啓ちゃんはちょっと困った風に顔をゆがめた。

「一人で考えたい?」

啓ちゃんの問いかけに、小さく頷く。

「ん、わかったよ。じゃ俺は教室戻るわ。…雨降りそうだから由衣も早めにね」

「ありがと、啓ちゃん」

あたしがお礼を言うと、少し嬉しそうに笑って、啓ちゃんは校舎内に戻っていった。


< 33 / 78 >

この作品をシェア

pagetop