YOU&I
「俺なんも知らないで柏木の事タラシとか言ってごめん」
「…うん」
「まず、それ謝りたくて」
あたしはなんとなく降り頻る雨を見ながら思った。
涼喜は、自分の言葉にちゃんと責任持ってるんだなぁ、って。
「ていうか、あたしもごめん」
涼喜に向き直って座り、あたしは涼喜を見習って素直に頭をペコリと下げた。
「へ?」
「あたし涼喜に八つ当たりしただけで、涼喜が悪いなんて思ってないよ」
「あぁ、その事。そんなんお互い様でしょ」
あっけらかんと言い切った涼喜。
お互い様の"お互い"の意味がわからない。
あたしのそんな心境が顔に出てたのか、涼喜が話し始める。
「あのね、あのとき言った言葉、ほんとは自分に言ったんだ」
"こうなる前に自分のモンにしないから、こんなめに遭うんだよ"
あたしにとって悪い意味で一番心に響いたこの言葉。
涼喜も同じような経験をしたことがあったということなのだろうか?
だからこそ、重みがあったのかもしれない。
「…」
「…柏木と」
「え?」
妙な沈黙を唐突に破ったのは、涼喜。
「柏木といた女」
「1組の人?」
「そー。アイツね、松前咲って言って‥俺の元カノ」