YOU&I


あたしは驚いて、口が動かなかった。
まさか、そんなところであたし達と涼喜達の恋愛が繋がるなんて。
あたしが予測した涼喜の"経験"は意外なほど身近にあった。

「由衣ちゃん驚き過ぎ。口開いてるよ」

そう言ってケラケラ笑う涼喜。

涼喜のいう"お互い様"は、本当にお互い様だった。
状況は微妙に違えど、大切な人をとられてしまったあたし達。
きっと涼喜もあたしと同じくらい、複雑な気持ちだったんだと思う。
そしてそれを原因にお互いのイライラがぶつかりあってしまったのだろう。

「お互い様の意味、わかった?」

…痛いほどに。

「んじゃ、仲直りってことで!」

勢い良くそう言い、涼喜はあたしの頭を乱暴に撫でた。
そしてへらっと笑う。
こんなバカっぽい笑い方しかしない涼喜も、実は大きな傷を背負っている人なのかもしれない。
そんな涼喜の気持ちを考えてみると、切なくて泣きそうになった。

「由衣ちゃん?」

俯くあたしの顔を覗き込む涼喜。
泣くまいと耐えている顔なんて最高にブサイクで、思わず恥ずかしくなって顔を背ける。


するとそのとき―

冷え切っていたあたしの体に、温もりが流れ込んできた。



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