YOU&I
この包み込まれる安心感を、あたしは知っていた気がする。
嘗ては啓ちゃんがあたしに教えてくれた。
でも今は違う。
今までのようにメンタル的なものではなく、縮こまってしゃがんでいた小さなあたしの体を覆う温もり。
誰かに抱きしめられたのは、初めてだった。
「俺、咲と別れてからも未練タラタラだったし、柏木といるの見てやっぱ少し後悔もしたけど、でも」
あたしの頭の上で、涼喜の声がする。
「でも俺高校入って由衣ちゃんと仲良くなって、未練はなくなったんだ」
「…あたし?」
「そう。やっと踏ん切りついたって思った」
「…」
「咲が次の恋をしようとしてんなら、俺も進もうって思えた」
彼が咲さんとどんな恋愛をしてきたのかは知らないけど。
でも涼喜の伝えようとしている気持ちは、あたしにまっすぐ伝わってきてる気がした。
「全部、由衣ちゃんのおかげ。ありがとね」
体を離して、あたしの顔を覗き込み、涼喜は優しくそう言った。