YOU&I




この包み込まれる安心感を、あたしは知っていた気がする。

嘗ては啓ちゃんがあたしに教えてくれた。


でも今は違う。
今までのようにメンタル的なものではなく、縮こまってしゃがんでいた小さなあたしの体を覆う温もり。




誰かに抱きしめられたのは、初めてだった。






「俺、咲と別れてからも未練タラタラだったし、柏木といるの見てやっぱ少し後悔もしたけど、でも」


あたしの頭の上で、涼喜の声がする。


「でも俺高校入って由衣ちゃんと仲良くなって、未練はなくなったんだ」

「…あたし?」

「そう。やっと踏ん切りついたって思った」

「…」

「咲が次の恋をしようとしてんなら、俺も進もうって思えた」


彼が咲さんとどんな恋愛をしてきたのかは知らないけど。
でも涼喜の伝えようとしている気持ちは、あたしにまっすぐ伝わってきてる気がした。


「全部、由衣ちゃんのおかげ。ありがとね」


体を離して、あたしの顔を覗き込み、涼喜は優しくそう言った。




< 37 / 78 >

この作品をシェア

pagetop