YOU&I
-しるし-
「…つーか由衣ちゃん、手冷たい」
抱きついていた体をそっと離して、あたしは自分の手を自分の頬にあてる。
熱い顔に対して冷えきった手は気持ちいい。
「普通に寒いよね、こんなとこに何時間も!由衣ちゃんバカ?」
涼喜はその事にいま気付いたらしく、いきなりまくし立てるように言った。
「…うん、寒い」
「そりゃーね。雨も強くなってきてるし」
そう言いながら涼喜は、あたしが自分の頬にあてていた手を掴み、自分の両手であたしの両手を包み込んだ。
正直、あたしは今まで一度も誰とも付き合ったことがなかったから、抱き締められるのもそうだし、こうやって手を温めてもらうのだってもちろん初めてで。
啓ちゃんはいつも頭を撫でるだけでそれ以外は絶対してこなかったし。
―だから緊張しちゃうわけで。
「…あの、涼喜?」
「ん?」
かと言って手を離して、なんて言えるわけないし…言いたくも、ない。
「‥なんでもないっ」
「あ、また顔赤くなってきたね♪」
「…」
もう諦めよう。
涼喜にからかわれてもしょうがない。
赤くなるもんはどうしようもないじゃん。