YOU&I
「どこ行くの?」
駅に向かっていると思えば、スイスイ角を曲がって行く涼喜。
あたしはもう何度目になるかわからない疑問を、半ば諦めながら投げる。
「はい、着いた」
「え?」
そこはどこにでもあるような、立派な住宅街。
その中のひとつの家の前で立ち止る。
着いたってもしかして―
「俺んち♪」
涼喜は楽しそうに笑ってそう言った。
「まだ誰も帰ってこないから自由にしてていいよ。じゃ、俺はちょっくらやってくるね」
そう言ってあたしをリビングに残し、涼喜は買い物袋を提げたまま洗面所らしき奥へ消えていった。
あたしはマナーモードにしっぱなしになっていた携帯を久しぶりに開くと、あーちゃんから鬼のように電話とメールが入っていた。
メールの内容はどれも同じようなもので、"どこにいるの?"だった。
まだ授業中の時間だから、電話ではなくメールを返す。
大丈夫だという事、いま涼喜の家にいる事、そしてありがとう、と。
送った後、あたしは差し支えが出ない程度にリビングを物色していると、すぐに返事が返ってきて、ずっとメールのやり取りをしていた。
それでも暇になったあたしは、涼喜の"自由にしてていいよ"という言葉に甘える事にして、2階へ上る。
さすがに親や兄弟などの部屋に入るのはマズイので、あたしは4つあるドアを順番に少しずつ覗いた。
1つは物置で、もう1つは両親っぽかった。
残った2つは、涼喜には兄弟がいる事を物語っている。