YOU&I
「…その顔は気付いてないね(笑)」
また呆れた顔をする涼喜。
申し訳なくなって小さくなるあたし。
気付く気付かない云々の前に、どの言葉の話なのかすらわからない。
「えっと‥」
「学校で言ったしょ。由衣ちゃんのおかげで未練なくなって、踏ん切りついたって」
そう言いながら涼喜は立ち上がり、コルクボードから真ん中の写真を外した。
そして涼喜は煙草を吸うのかわからないけれど、テーブルにあった灰皿の上で、写真にライターの火を近づける。
角っこに火がつくと瞬く間に広がって、あっという間に灰になってしまった。
部屋の中には、焦げ臭いような異様な匂いが漂う。
「…言ってたね」
「それってどういう意味かわかってないでしょ」
「うん」
あの言葉に、表面上見える分以外に深い意味があるなんて思いもしなかったあたしは、思わず即答をする。
そんなあたしを涼喜は呆れを通り越して笑い出した。
「まぁそれが由衣ちゃんのいいところだよね。俺も由衣ちゃんのそんなマイペースなところが好きになったわけだし」
笑いながらそう言い、涼喜は、灰皿の中にあったお香の燃え残りの棒で、灰皿の中の灰をかき混ぜた。
マイペースはお互い様だ、と思いながらもあたしは、グルグル混ざる灰皿だけを一点に見つめる。
そのとき、ピタリと混ぜる涼喜の手が止まった。
不思議に思い、顔を上げて涼喜の顔を見ると、顔だけあたしのいない逆側を向いて、真っ赤になっている涼喜がいた。