YOU&I
「…ここまで言っても、まだ気付かないわけ?」
照れ臭そうに顔をそらしたまま、涼喜はそう言う。
「え?」
なんの事かさっぱりわからない。
「もう、鈍感過ぎ。俺のいまの言葉思い出してみて?」
涼喜はそう言うと、また灰皿をグルグル混ぜる。
「いまの言葉?‥えと、あたしのマイペース?なところが…」
「ちょ、待って!」
あやふやなので復唱しようとするあたしの言葉を、いつもおっとりしてる涼喜が珍しく焦って遮る。
「…復唱は頭の中でお願いします」
「えー…」
"俺も由衣ちゃんのそんなマイペースなところが好きになったわけだし"
ん?
「…好き、って‥」
「‥やっと気付いた?」
「好きってライク?」
「まさか!(笑)」
あたしが思い出している間に、すっかり落ち着きを取り戻した涼喜がすかさず突っ込む。
その瞬間、あたしの顔の温度は一瞬で上昇した。
「えっ…」
今度はあたしが真っ赤になる。
そんなあたしを涼喜は、今まででも一番、優しい目で見つめた。
「なんか俺、もうね、由衣ちゃんがやっと気付いてくれた事で満足だわ」
そんな事を言いながら、涼喜はやっぱり笑っていた。
あたしはなにも言えなくなり、自分でもどこを見ているかわからないけれど、一点をひたすら見つめていた。
これを世の中は"放心状態"と呼ぶのだろうか。