YOU&I


「いや、そうなんだけど…あたし、涼喜の事、多分好き」

「うん」

まだ言葉にして誰かにうまく伝えられるほどハッキリとしない、あたしの気持ち。
どうすれば、それをうまく伝えれるだろう。

ドキドキして、胸がつかえて、息苦しいよ。
ねぇ啓ちゃん。
啓ちゃんはいつも何度でもあたしに自分の気持ちを真っ直ぐに伝えてくれていた。
それってすごいことなんだね。
あたしはそれに1度も応えることはできなかったけど。
啓ちゃんはやっぱりすごい人だね。
あたしは…だめだね。
啓ちゃん、あたし、頑張るよ。


「あの、でも好きだけど…付き合うとなると、やっぱりわからなくなるの」

「‥うん」

「だから…えと、」

言葉が出て来ないよ。
あたしの今の気持ちを表す言葉が、わからない。

「うん、わかった。わかったから、由衣ちゃん」

そう言うと涼喜はあたしに近寄り、あたしの頭を撫でた。

「ごめん、涼喜…好きだけど、付き合えない」

「うん。それで十分」

涼喜はあたしの頭を抱え込むように抱き、ポンポンと頭を優しく叩いた。
それが不謹慎にも心地好くて、涼喜の温かさに改めて触れた気がした。

「ごめん、由衣ちゃん悩ませちゃったね?」

「ううん‥」


「ごめんね…好きだよ、由衣ちゃん」



涼喜はそう言うと、あたしの頭から両手を話し、あたしの顔を覗き込んだ。

そして―


あたし達は触れるだけの、短いキスをした。






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