YOU&I


啓ちゃんの気持ちに応えてあげる事ができなくて、啓ちゃんは新しい恋を見つけて。
それはあたしが一番祝福してあげるべきなのに…2ヶ月も経つ今でも、あたしは一度も啓ちゃんに"おめでとう"は言えていない。
それどころか、咲ちゃんの話すら、1度もした事がなくて。
そして他人の口から2人の名前を聞いたときや、2人が一緒にいるのを見かけたとき、あたしは思わず目を逸らしてしまう。

「‥2人が、なしたの?」

「昼休みに廊下で大喧嘩してたんだって(笑)」

いたずらに楽しそうに笑ってリョウはそう言った。
あたしの心境は、なんとも複雑なもので。
祝福もできない、喧嘩したと聞いても心配もできない。
あたしは一体、何を考えてるんだろう。
ただ、胸の中に広がるモヤモヤから、あたしはできるだけ逃げようとしていた。

「へぇ」

「咲は気強いからなぁ。柏木みたいな優しいタイプは大変だろうなー」

あたしはこんなにモヤモヤしてるのに、リョウはまるで何も感じてないように、そう言って一人でウンウンと頷いていた。

「‥ね、リョウ。今日も放課後…」

「あ!俺今日地元のツレと約束あんだよねー」

「そうなんだ」

「でも俺んち行ってていいよ!今日は哲也いると思うし。俺、夜には帰るしさ!」

「…わかった」


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