YOU&I
「なぁ由衣。俺、リョウ兄と由衣って両想いだと思ってた」
どこか残念そうに、そして真剣な顔をして哲也はそう言った。
いつもじゃれあってばかりで、真剣な話をした事も、そんな顔をするという事も、あたしは知らなかった。
‥なんて、呑気な事を考えているあたしは、自分がショックを受けているのか、それさえも判別できなくなっていた。
「両想いだよ」
「じゃなんで付き合わねーの!?」
ムキになったように、あたしへ詰め寄る哲也。
何で付き合わなかったのか、なんて、今やあたし自身でもうまく説明できない。
哲也のその疑問が素直過ぎて、当たり前過ぎて、あたしは今までの自分をすごく後悔し始めた。
"付き合う"という口約束には、そこまでの効力があるという事を、あたしは知らなかったんだ。
両想いであろうと片想いであろうと、付合ってしまえば、相手を繋いでおけたのかな。
「なぁ由衣。リョウ兄浮気してんじゃん…」
ムキになったかと思えば、今度は少し悲しそうに、悔しそうにそう言う哲也。
あたしも哲也ほど感情を剥き出しにできればどれほど楽だろう?
ただ哲也の言葉を呆然と聞き入れるだけで、なにも言葉が出て来ない。
まるで哲也が自分かのように、眺めていた。
「…哲也」
「なに」
「哲也はなんでそんなに怒ってるの?」
怒りたいのはあたし。
悲しいのもあたし。
悔しいのもあたし…のハズなのに。
あたしの心の中は驚くほど落ち着いていて。
それがどうしてかもあたしはなんとなく気付いている。