YOU&I



「…ねーってば」

もう何度も声をかけている、というような呆れた声に、あたしは慌てて顔を上げた。
気付けばクラス中が沈黙していて、視線があたしに集まっている。
担任もイライラした様子で顔を上げたあたしに溜息をつく。
キョロキョロするあたしに、あたしを起こした張本人が黒板を指差す。

―あ。

黒板には"自己紹介"の文字。
その瞬間、あたしは今まで自分が爆睡していたことや今の状況を察した。
ヤバイ、と思いつつ申し訳なさからあたしはゆっくり立ち上がり、腰低く挨拶をする。

「あ、あたし、えと、春日由衣です」

それだけ言ってあたしは、ストンと座る。
いきなりの状況に呆然と次の子の自己紹介を聞いてると、横からポンポンと肩を叩かれた。
そのとき、あたしは隣りの人に起してもらったという事を思い出し、お礼を言おうと横を向いたそこには、金髪の彼が座っていた。

「よろしくね!」

長めのサイドの髪をいじりながら満面の笑みで言う彼。

「あ‥よろしく、ね」

戸惑いながらあたしがそう言うと、いきなり彼はあたしの髪をジッと見つめた。

「え?なに?」

「いやー、綺麗な髪」

あたしはあーちゃんや恭介と違って、髪は真っ黒でストレート。
コテで多少イジってはいるものの、傷むような事はあまりしてないから、自慢の髪。

「ありがと」

彼は少しも躊躇せず、あたしの毛先に触れ、一束そっと摘み上げる。

「俺、ずっと金髪だから酷いんだよ」

言われずとも見ればわかる。
1度脱色すれば誰だって傷むだろうし、それは傍目からもわかる。

「ずっと?」

「そう、中1から」

3年も金髪を継続させてるならそれはきっとすごく傷むだろう。
あたしにはあんまりその感覚はわからないけど。

「由衣ちゃんは染めてない?」

「うん、1回も」

「なんか逆にすごいね?そうでもない?」

「いや、珍しい方かな」

「だよねだよね!でも由衣ちゃん黒髪でーストレートでートップボリューム出してー今の髪型、似合うと思うよ?」

これと言ってあたしの返答を待つわけでもなく、彼は自分で言って自分で納得しているようだ。


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