YOU&I
「ま、どうであれ俺は由衣を応援してやるからさ」
「はは、ありがと」
「おう。頑張れや」
「頑張りまーす」
そう言い、哲也はリョウの部屋を出て行った。
哲也が心配してくれてるのがわかったからおどけて頑張る、なんて言ったけれど、正直あたしはもう頑張るつもりもなかった。
全てはあたしが悪いんだ。
あたしが変な理屈をこねてのんびりしてるからリョウはきっと不安も感じていただろう。
そしてその結果がこれなんだ。
「…あたしなんて、いない方がいいのかな‥」
リョウの中で、あたしはもういてもいなくてもいい存在なのかもしれない。
あたしに怒る権利もない。
そう考えたあたしは、自分の部屋にいる哲也に気付かれないようにそっとリョウの家を出た。
来るときは景色が変わって見えたこの住宅街も、今は暗くなった空の下に、街灯でボンヤリ映っているだけで、モノクロの世界だった。
なんとなく、真っ直ぐ家に帰りたくなくて、駅前のショップがたくさん入っているビルに立ち寄る。
基本的にレディースの服とか小物の店ばかりだけど、7階と8階だけメンズのブランドの店が入っていて。
8階建てだから女の子は理由がない限り大抵6階までしかいかないんだけど、あたしは1階から順に店をゆっくり回った後、7階の隅っこにある小さなカフェに入ろうと思って、エスカレーターに乗った。
その時、横の下りのエスカレーターから降りてくる人にふと目が止まる。
「…啓ちゃん!」