YOU&I


サングラスをしていたし、私服を見たのも久しぶりだったから最初戸惑ったけど、通り過ぎたときの見慣れた後ろ姿が確信させた。
思わず呼び止めたはいいが、上りと下りはあっとゆう間に離れてしまう。
振り向いてサングラスを外したのは、やっぱり啓ちゃんだった。

「由衣っ」

「ちょ、ちょっとそこで待ってて啓ちゃん!」

「いや、由衣が待ってて!」

「え!?」

あたしはとりあえず上りきってから、下りのエスカレーターに乗ろうと思って、啓ちゃんに下にいるように言うが、啓ちゃんに逆に待ってろと言われ、あたしはパニクる。
だって啓ちゃん…この年でエスカレーター逆走してきたよ‥恥ずかしくないのかな(笑)
時間はもう8時を回っているからあたし達以外にエスカレーターにお客さんがいないのが、ラッキーだった。
あたしが上に到着したとき、啓ちゃんも到着。

「…かなりウケる、啓ちゃん」

「それはどうも」

そうだ、啓ちゃんはこういう人。
どんな小さい事でも、いつも自分が、と先に動ける人。
なんでも人に気を遣われるのが嫌いで、人に気を配る事が好きらしい。
啓ちゃんは優しい人だからかな。

「啓ちゃん一人?」

「うん、さっきまで恭介とかといたけど。由衣、カフェ入ろ?」

「あ、うん」

そうか、きっと立ち話になるから、それならカフェに入ろうと思ってわざわざ逆走してきたんだね。


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