YOU&I
「…えっと、鈴木くんだっけ?」
「…」
「…」
「すずしま!」
妙な沈黙の後、彼は学ランの内側に刺繍された名前をわざわざ見せつけ、"しま"の部分を強調してそう言った。
「しま、ね。‥下の名前は?」
「涼喜!」
「…鈴島くんは金髪似合ってると思うよ」
「下の名前聞いたんだからさー下の名前で呼んでよ」
「涼喜くん」
「呼び捨てでいいし!」
第一印象の通りマイペースな涼喜ワールドにあたしはすっかりはまってしまっていた。
というか、まだ他の人が自己紹介をしているにも関らず、体を完璧にあたしの方へ向けて、普通のボリュームで話す彼は、やっぱり自由奔放なタイプなんだろう。
「‥涼喜」
「うん、いいね」
「…」
「あとありがと。金髪」
「あ、うん」
「俺のシンボルだから。何て言われようと変えたくないの!」
そう言って彼は、自分の金色の頭を指差して笑いながら言った。
きっと中学でも散々黒に直すよう言われ続けてきているはずだ。
そしてこの高校でも初日から遅刻した上、金髪じゃぁ教師は黙ってはいないだろう。
でもなんとなくだけど、あたしは思った。
彼は何を言われてものらりくらりと逃げて、絶対金髪を維持するだろう、って。
漠然とそう思った。
鈴島涼喜。
恭介の言う通り、確かにおもしろそうな人。