その瞳で見つめて~恋心~【完】
「やっぱ、直接、言うしかないか……」

「え?」

進藤先輩はこの静かな部屋の中でも聞こえないぐらいにボソッとつぶやいた。

その後、進藤先輩はあたしの隣に移動して座り、見つめてくる。


「俺──水嶋のこと、好きになっちまった」

「えっ!?」

ええっ?
ど、ど、どういうこと……?


いきなりの告白に動揺を隠せるわけもなく、大きな声を出してしまった。


「………………」

進藤先輩は言ってしまったと後悔しているのか、恥ずかしかったのか、床を見つめたまま。

あたしは急な展開についていけなくて、状況を把握できずに呆然としていた。


そんなあまりにも重すぎる沈黙に、さらに頭はパニック状態に陥っていた。


会話が消えちゃった……。
で、でも。
2人っきりの密室で、告白されてもどうしようもできない!


「──水嶋」

「え?」

進藤先輩はまるで焦っているように、あたしの返事を待たずに目を閉じて顔を接近させた。


「っ、やだ……!」

え、ちょっと待っ……!


キスされてしまう!──そんな焦燥感に駆られ、あたしは顔を窓に向けて拒否した。


「──あ、悪ぃ!」

あたしがはっきりと拒んだので進藤先輩は我に返って、すぐさま向かい側のいすに移動して距離を取った。


び、びっくりした……。


「水嶋……」

「あ、はい」

「さっきの、嘘じゃねぇから」

先輩は、確かに嘘偽りがない真っすぐな視線をあたしに向けた。


あたしは言葉を返すことなく、パッとすぐに景色を眺めた。

けれども、目に映る光景はライトアップされた園内ではなくて、進藤君の笑っている顔──。

脳が見せてくれる残像に、目頭が急速に熱くなった。


これが、もっと前だったら、うれしかったのに……。
今は、すごくつらい。
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